弁護士による税務紛争対応(再調査の請求・審査請求・税務訴訟,税務調査)
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本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾
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消費税法等の一部が改正され,国境を越えて行われるデジタルコンテンツ配信等の役務の提供に係る消費税の課税関係の見直しが行われました。この改正の適用は平成27年10月1日からなので,既に適用されております。
国税庁による事業者向け資料(「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について」(国内事業者の皆さまへ)平成27年5月)では,次のような改正ポイントが説明されており,リバースチャージ方式による申告の方法等が解説されています。
(1)電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し
「電気通信利用役務の提供」(電子書籍の配信などインターネット等を介して行われる役務の提供)について,内外判定基準を変更(国外取引から国内取引に)。
(2)課税方式の見直し(「リバースチャージ方式」の導入)
「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外を分け,事業者向け電気通信利用役務の提供については,国外事業者から当該役務の提供を受けた国内利用者が申告・納税を行うリバースチャージ方式を導入。
(3)国外事業者から受けた消費者向け電気通信利用役務の提供に係る仕入税額控除の制限
消費者向け電気通信利用役務の提供については,当分の間,仕入税額控除を制限する。
(4)登録国外事業者制度の創設
国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受ける消費者向け電気通信利用役務の提供については,上記(3)の例外として,仕入税額控除を行うことができる。
なお,国税庁消費税室は実務対応のためのQ&Aも公表しています(「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」平成27年5月(平成27年9月改訂))。
こういった資料を見れば,どのように申告をするかということは分かると思います。
しかしながら,そもそも,なぜ,このような制度を導入し,複雑な制度設計をしたのか,ということはなかなか分かりにくいのではないかと思います。
ここでは,末尾の文献等を参考に,私なりに理解したところを整理してみました。
・インターネットを介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエアの配信
・顧客に,クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
・顧客に,クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
・インターネット等を通じた広告の配信・掲載
・インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
・インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
・インターネットを介して行う宿泊予約,飲食店予約サイト(宿泊施設,飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
・インターネットを介して行う英会話教室
以上をまとめると,次のとおりです。
(1)BtoC取引
①従前 国外事業者は消費税課税なし(国外取引)
=料金にも消費税含まれず
②今後 国外事業者にも消費税課税(国内取引)
=料金に消費税含まれる
(2)BtoB取引
①従前 国外取引なので国外事業者は消費税負担なし
輸入した国内事業者において仕入税額控除不可(繰延支払い方式)
②今後 国外取引
事業者向け電気通信利用役務の提供については,国外事業者は消費税課税なし。輸入した国内事業者において課税(リバースチャージ方式)+仕入税額控除(一般課税+課税売上割合が95%未満の場合のみ。)
・財務省主税局制二課(2013年11月「国境を越えた役務の提供等に対する消費税の課税の在り方について」)
・財務省 平成27年度税制改正の解説
・岡村忠生「国境を越えた役務の提供と消費課税」(法学教室 2015年6月号)
・佐藤英明「電子的配信サービスと消費課税」(ジュリスト 2012年11月号)
・渡辺智之「国境を越えた役務の提供に対する消費税課税―見直しの背景・意義・今後の課題―」(税経通信 2015年8月号)
・みずほ総合研究所(鈴木将覚主任研究員)「国境を越えた役務に対するVAT」(2015年9月2日)
・金井恵美子「国境を越えた役務の提供に関する課税制度の概要」(日税研メールマガジン vol.102 平成27年9月15日発行)