弁護士による税務紛争対応(再調査の請求・審査請求・税務訴訟,税務調査)
 

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東京都中央区築地1丁目12番22号 コンワビル8階
本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾

TEL 03-5550-1820

 

税務紛争手続

税務訴訟

 審査請求で主張が認められなかった場合,行政判断は終了していますので,課税処分等を取り消すためには,裁判所に取消訴訟を提起せざるを得ません。

税務訴訟の概要

  1.  税務訴訟は,
    (1) 裁決があったことを知った日から6ヶ月以内に,
    (2) 管轄を有する地方裁判所に,
    (3) 訴状を提出して
    行う必要があります。
     
  2.  提出先の地方裁判所については,次の3つの選択肢があります(行政事件訴訟法12条)。
    (1) 東京地裁(国を被告とするので)
    (2) 処分をした税務署,国税局の所在地の裁判所(たとえば浦和税務署ならさいたま地裁)
    (3) 特定管轄裁判所(原告(納税者)の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所。たとえば奈良県に居住しているなら大阪地裁)。
     
  3.  裁判の場合には,1審(地裁)だけでは決着がつかず,高裁,最高裁までもつれ込むことがありますし,結論が異なることもあります。

     また,1審判決までだけでも,2,3年程度は時間がかかりますので,事案にもよりますが長期間の紛争状態となることは避けられません。

訴訟提起前に注意いただきたいこと

  1.  税務訴訟を提起する前に注意いただきたいことがあります。

     それは,「本当に,訴訟提起すべきなのか?」ということです。税務訴訟の原告(納税者)敗訴判決を読んでいると,なぜ,納税者に明らかに勝ち目がなく,敗訴が確実であるのに訴訟を起こしたのだろうと疑問を抱くことが少なくありません。

     税務訴訟を検討されている方には水を差すようですが,重要なことなので,あえて書いておきます。
     
  2.  税務訴訟は,費用だけではなく,場合によっては数年間という多大な時間を要します。明らかに勝ち目がないなら税務訴訟を起こすべきではありませんし,弁護士も引き受けるべきではありません(上場会社のように株主へ説明する必要がある場合等を除く)。

     弁護士自身が分からないからとりあえず訴訟提起をする,というのは,専門家としての責任の放棄です。
  3.  とくに,顧問税理士が争っても無駄であると消極的な見解を述べているのに,税法に精通しない弁護士に相談して税務訴訟をするような場合には,明らかに無益な訴訟提起をしようとしている可能性があるのではないかと思います。
     
  4.  税務訴訟を提起する前には,本当に勝ち目があるのか,しっかりと吟味するべきです。
     すくなくとも,私は,勝ち目のない案件でははっきりとその旨を伝えます。
     
  5.  その上で,ですが,国税不服審判所でも取り消されなかった原処分について,訴訟で取り消されることはあります。

     それらの事案の特徴は,大きく言えば次のようにまとめられると考えます。

     (1) 法令の解釈や通達の運用に関わることであって,取消しの場合は税務行政の変更が必要になることから,行政内部(審判所を含む)では取り消せない(裁判所に取り消してもらうしかない)事案

     (2) 法的には適法だが,課税庁から見れば容認しがたい租税回避スキームであり,行政内部では取り消せない事案

     (3) 課税庁に基本的な事実の誤解がある事案 

     そういった事案では,税務訴訟によって決着が図られることになります。

税務訴訟の進め方

  1.  税務訴訟は訴状の提出から始まり,国側の答弁書,原告側の準備書面等の応酬を経て,必要に応じて証人尋問が実施され,判決が下されます。

     原告(納税者)側の主張,立証のポイントは,再調査の請求審査請求と基本的に同様ですが,次の点に留意する必要があります。  
  2.  国側は,訴訟後は国税ではなく法務省が担当するので,処分時等とは異なった理由を主張してくることがありますし,あらたに調査,証拠収集をすることがあります。

     また,課税庁側から開示される証拠も審査請求段階よりは増えることが多いので,適切に防御する必要があります。
     
  3.  判断するのは裁判官ですので,必然的に,税務行政の取扱よりも,税法,民法等の法的な論拠が重要となります。

     裁判官は税務事件だけを取り扱っているわけではないので,丁寧に,税法の体系と当該事案の税法条文の趣旨の説明,他の裁判例や裁決例の解釈とその射程,国側の主張がなぜ誤っているのかを論じるべきです。裁判官は,「基本的には国が正しいのだろう」という推定をしている場合もあると思いますので,当該推定を覆すに足りる精緻な法律論を展開する必要があります。
     
  4.  弁護士にありがちですが,「民法ではこうだから,この課税処分はおかしい」と論じるだけで終わってしまう場合があります。
     課税関係は,借用概念を用いている場合を除いて原則として民法等の私法とは別次元に考えられるので,民法に依拠するだけでは裁判官を説得できません。
     
  5.  法的な主張だけでなく,事実主張も重要です。

     以前,行政訴訟を担当する裁判官から,行政訴訟での書面は,法律の理屈が過重に書かれている反面,必要な事実主張が足りないという傾向があると聞いたことがあります。
     法律的な主張は,丁寧さを心がけつつも事案の解決に必要な限度で簡潔に行い,基本となる事実関係を証拠からしっかりと裏付けて主張することが大切です。

税理士が補佐人となる意味

 平成13年の税理士法改正によって,税理士が裁判所で補佐人として活動できるようになりました(税理士法2条の2)。

 多くの事例において,納税者のこれまでの事業状況,経理状況,申告状況を一番把握しているのは顧問税理士ですので,もしご承諾いただけるなら,補佐人に就任いただいた方がよいと思います。