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本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾
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遺産分割には,次の4つの方法があります。
(なお,本稿をもとに,税務弘報平成28年7月号に「相続税申告の落とし穴ー代償分割と調整計算」と題する原稿を掲載しました)
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(注) 算式中の符号は、次のとおりである。
Aは、代償債務の額
Bは、代償債務の額の決定の基となった代償分割の対象となった財産の代償分割の時における価額
Cは、代償分割の対象となった財産の相続開始の時における価額(評価基本通達の定めにより評価した価額をいう。)
A(代償債務の額)=5000万円
B(不動産時価)=1億円
C(不動産相続税評価額)=8000万円
代償財産の額=A×C÷B=5000万円×8000万円÷1億円=4000万円
そうすると,甲と乙の取得財産は次のようになります。
甲 4000万円(=8000万円(相続税評価額)-4000万円)
乙 4000万円
東京高裁平成17年2月10日判決もこの通達の取扱いと整合的です。
では,相続人が多数で,調整計算の必要がある不動産も複数あった場合にはどのように計算するべきでしょうか。
(事例)
基本は以上のとおりなので,分析的に考えればよいです。
分析1 各自の取得不動産(時価)から,他の相続人に対して法定相続分に応じた代償金を支払う
まず,自宅,マンションとも,本来は法定相続分に応じて甲,乙,丙が取得するので,甲は自宅を取得し乙,丙に代償金を支払い,乙はマンションを取得して甲,丙に代償金を支払うこととなります。
(代償金額(A)及び支払先)
不動産取得者 | 取得不動産(時価(B)) | 甲 | 乙 | 丙 | 合計 |
甲 | 自宅(1億8000万円) | × | 6000万円 | 6000万円 | 1億2000万円 |
乙 | マンション(9000万円) | 3000万円 | × | 3000万円 | 6000万円 |
丙 | なし | 0 | 0 | × | 0 |
分析2 各不動産に係るC/Bの値
次に,不動産の相続税評価額(C)と時価(B)との乖離を見ます。
不動産取得者 | B(時価) | C(相続税評価) | C/B |
甲 | 1億8000万円 | 1億4400万円 | 0.8 |
乙 | 9000万円 | 8100万円 | 0.9 |
分析3 上記1の代償金の額(A)に,上記2のC/Bの値を乗じて,代償財産の額を調整計算する。
(代償金額(A×C/B)及び支払先)
不動産取得者 | C/B | 甲 | 乙 | 丙 | 合計 |
甲 | 0.8 | × | 4800万円 | 4800万円 | 9600万円 |
乙 | 0.9 | 2700万円 | × | 2700万円 | 5400万円 |
分析4 上記3から,誰が,誰に,いくらの代償金(調整後)請求権を有するのかを整理する。
甲 乙に対し2700万円
乙 甲に対し4800万円
丙 甲に対し4800万円
乙に対し2700万円
これを申告書に取得財産として計上すれば,相続税の額も平等になります。
まとめると次のとおりです。
取得不動産(相続税評価) | 支払う代償金 | 受け取る代償金 | 合計 | |
甲 | 1億4400万円 | -9600万円 | 2700万円 | 7500万円 |
乙 | 8100万円 | -5400万円 | 4800万円 | 7500万円 |
丙 | 0 | 0 | 7500万円 | 7500万円 |
実務上,代償分割が行われる事例は多く,代償金は相続税評価額ではなく,相続人間の公平のため,時価を基準に計算される場合が多いと考えます。
一方で,上記通達の取扱いを適用しなければ,遺産分割では平等になるとしても,相続税負担が不平等になってしまうので,留意するべきでしょう。