弁護士による税務紛争対応(再調査の請求・審査請求・税務訴訟,税務調査)
 

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本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾

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税務紛争手続

課税処分等の種類

 ここでは,税務署や国税局の処分を争う税務紛争手続(再調査の請求(異議申立て),審査請求,税務訴訟)について解説します。

 税務紛争は,基本的に,「課税処分等(原処分)の取消しを求める」という手続になります(ここでは,税額を確定させる「課税処分」と確定した税額を徴収する「徴収処分」を併せて「課税処分等」といいます。)

 原処分にも様々なものがあり,たとえば,①(増額)更正処分,②決定処分,③加算税の賦課決定処分,④更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分,⑤青色申告の承認の取消処分,⑥源泉所得税の納税告知処分,⑦債権差押え等の徴収処分,⑧第二次納税義務の納付告知処分等があります。

以下では,典型的な課税処分等をご説明します。

更正処分・決定処分

  1.  所得税・法人税・消費税・相続税等の申告によって確定する租税について,納税申告書が提出されている場合に,課税庁が,誤りがあるとして行う処分が更正処分であり,納税申告書が提出されていない場合に行う処分が決定処分です。

     更正処分には,税額を増額させる増額更正処分と,減額させる減額更正処分があります。

     多くの税務紛争は,この「増額更正処分」の取消しを求める,という形で提起されます。
     
  2.  更正処分,決定処分をできる期間は,原則として,法定申告期限から5年間です(贈与税については6年間)。

     ただし,「偽りその他不正の行為」がある場合には,7年間になります。
     典型的には,仮装・隠ぺい行為があった場合がこれに当たります。

加算税の賦課決定処分

  1.  加算税は,申告義務,(源泉所得税の)徴収納付義務が適正に履行されない場合に課される税です。所得税,法人税等が本税と呼ばれるのに対し,加算税や延滞税等は附帯税と言われます。

     加算税の種類には,①過少申告加算税(原則として増差税額の10%),②無申告加算税(同15%),③不納付加算税(同10%),④重加算税(同35%)があります。

       加算税は,税務調査後の増額更正処分等の処分がなされた場合だけではなく,自ら修正申告をした場合にも原則として発生するので注意が必要です。
     
  2.  特に重加算税は税率も高いので,頻繁に争いの対象になります。

     重加算税の要件は,「納税者が,その国税の課税標準等又は税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし,又は仮装し」「その隠ぺいし,仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」(国税通則法68条)等です。

    何をもって「隠ぺい,仮装」というかについては,二重帳簿の作成,帳簿,決算書類,契約書等の破棄・隠匿,帳簿書類の改ざん,意図的な集計違算,架空名義による取引,架空名義利用による売上除外等がこれに当たるとされています(「申告所得税の重加算税の取扱について」等)。

     架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為がなくても,「納税者が,当初から所得を過少に申告することを意図し,その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上,その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の右賦課要件が満たされる」とした例もあります(最高裁平成7年4月28日判決)。

     一方で,単なる申告漏れ(過少申告)では,上記「隠ぺい,仮装」がないとされる場合もあります。

    重加算税が課せるかどうかは微妙なケースもあり,微妙なケースでは課税庁としては,それなりに積極的に重加算税を課する場合があるので,よく紛争になります。
     
  3.  いずれの加算税も,調査があったことにより更正処分等があるべきことを予知(「更正予知」といわれます。)しないで修正申告等をした場合(「自主修正」といわれます。)には,減額ないしはゼロとなります。

     どのような場合に更正予知となるかについては,学説,裁判例はまだ固まっていません。ただし,裁判例の大勢は,単に調査が開始されただけ(「調査開始説」といわれます。)では足りず,税務職員が調査に着手し,その申告等が不適正であることを発見するに足るかあるいはその端緒となる資料を発見し,これによりその後の調査が進行し先の申告が不適正で申告漏れの存することが発覚し更正に至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階(「客観的確実性説」といわれます。)をいうと解しています。
     
  4.  当初申告が間違っていても,そのことに「正当な理由」がある場合には,加算税はかかりません。

     正当な理由について,最高裁判決は,「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」をいうとしています(最高裁平成18年10月24日判決)。税務通達や課税庁の解釈が確定していなかった場合等がこれに当たると解されています(ただし,単に財産や収入を知らなかったから申告しなかった,というだけでは認められません)。

更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分

  1.  申告所得税,法人税,消費税,相続税等は,納税者が自ら申告することで税額が確定します。

     そして,納税者が,いったん申告によって確定をさせた税額が,実はもっと低額であったという場合に行う手続が「更正の請求」です(国税通則法23条)。

     更正の請求は,原則として,法定申告期限から5年間,行うことが出来ます(平成23年度税制改正によって,従前の1年間から延長されました。)

     要するに,納税者は,いったん申告をしたら,勝手に税額を減額することはできず,更正の請求という手続を踏まなければならない,ということです。
     
  2.  税務署長は,更正の請求があった場合,納税者の言い分を認める場合には,減額の更正処分を行います。これで済めば,特に問題はありません。

     しかし,やはり納税者の新たな言い分は認められないとして,減額更正をしない場合があります。これが,「更正をすべき理由がない旨の通知処分」です。

     納税者は,当該通知処分に不服があれば,再調査の請求,審査請求等の不服申立手続を行うことが出来ます。

第二次納税義務の納付告知処分

  1.  税金は,本来は,その税金の納税義務者が支払うものですが,一定の場合に,本来の納税義務者以外の第三者にも支払い義務が発生する場合があります。

     その一つが,第二次納税義務と言われるもので,納税義務者が滞納をした場合に,その財産について滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足する場合に,納税義務者と一定の関係を有する者が負担を求められます。
     
  2.  第二次納税義務は,国税徴収法32条以下に規定があり,①無限責任社員,②清算人等,③同族会社,④実質課税額等,⑤共同的な事業者,⑥事業を譲り受けた特殊関係者,⑦無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務が規定されています。
     
  3.  第二次納税義務の制度自体は,昭和34年の国税徴収法制定によって整理されたもので制度としては古いのですが,条文の文言が不明瞭なこと,課税庁に(時として不合理に)有利にも読めること,本来の納税義務者以外の第三者に,税務調査のような深度のある調査をせずに課する場合が多いことなどから,かなり深刻な税務紛争となることがあります。