弁護士による税務紛争対応(再調査の請求・審査請求・税務訴訟,税務調査)
〒104-0045
東京都中央区築地1丁目12番22号 コンワビル8階
本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾
TEL 03-5550-1820
マンション等の管理組合は,建物の区分所有等に関する法律(「区分所有法」)3条に規定する区分所有者の団体として,建物の管理等を行います。
このような管理組合には様々な収入,支出が生じます。区分所有者から管理費や駐車場使用料を徴収したり,建物に携帯電話の基地局が設置されたことによる対価を取得したりします。駐車場は外部の方に貸す事例もあります。
今回は,管理組合の税務のうち,法人税についての考え方をまとめてみました。消費税は次回掲載します。
科目 | 内容 | 収益事業 |
携帯・PHS基地使用料 | 基地局設置の対価 | 不動産貸付業(国税庁HP) |
公衆電話設置手数料 | NTTが建物の共用部分に設置 | 不動産貸付業 |
荷捌場使用料 | 運送業者が入居者のために荷物を建物に搬入する際,地下の荷捌場に運搬車両を駐車させ,時間制の料金を徴収 | 駐車場業 |
駐車場 | 区分所有者,入居者に限定して利用させる | × |
広告枠使用料 | 建物の共用部分(壁面)の広告枠を入居者が広告のために使用 | × |
会議室使用料 | 建物の共用部分(会議室)を区分所有者,入居者が利用 | × |
それでは,なぜ,同じく管理組合が収受する金員であるのに,このような違いが生じるのでしょうか。キーワードとなるのは,管理費収入は共済事業的な事業に係る収入であり収益事業収入ではなく,また,内部の区分所有者等に駐車場等を利用させることに係る駐車場使用料等は管理費と同様の性質を有する(管理費の割増金)ということであると考えられます。(この視点は,消費税の課税関係を考える上でも重要です)
この点,上記裁決は,収益事業収入に該当するか否かについて,「人格のない社団等の収入が,収益事業に係る収入となるためには,その事業が法人税法施行令第5条第1項に列挙された事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。以下「政令において定められた事業」という。)で,継続して事業場を設けて行われるものからの収入であることが要件となる。そして,当該収入に係る事業が,政令において定められた事業に該当するか否かについては,当該事業の目的,内容,態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である。」と基準を定立しています。
その上で,まず,管理費については,「本件管理費の徴収による収入は,外形的には政令において定められた事業の形態を有するものに係る収入であるとしても,本件建物等の管理のために徴収され,使用されるという本来の目的及びその使途に加え,同収入の一部は,将来の大規模修繕等に備えて積み立てられていることからすると,当該収入は,本件建物等の管理や将来において当該修繕等が行われることによって利益を受ける区分所有者のすべてが資金を拠出し,請求人がこれを保管するという一種の共済事業的な事業に係る収入とみるべきであって,政令において定められた事業に係る収入であるとは解されない。」としています。
さらに,内部の区分所有者に利用させる駐車場使用料については,「外形的にみれば駐車場業の形態を有するものに係る収入であるところ,実質的にも,請求人が本件駐車場を使用させている行為が駐車場業に該当するか否かについて検討する」とし,「①実際に本件駐車場を使用しているのは本件区分所有者のすべてではなく,その一部であり,負担の公平,調整という観点を考慮する必要があることから,請求人は,本件駐車場の施設の管理等に要する費用に充てる目的で徴収しているものと認められることに加え,②本件建物においては,駐車場使用料が近隣の相場よりも低額な料金設定をされていて,実費相当分を大幅に超過するような金額が支払われているとは認められないこと,③徴収した金員のうち一部は本件建物の修繕等のために大規模修繕積立金に振り替えられ,積み立てられているものであり,本件建物の維持,管理目的を超えて利益を上げることを目的として徴収しているとは認められないことを総合して考慮すると,実態として,請求人が駐車場使用料として計上した収入は,請求人が徴収する本件管理費による収入と同様の性質を有するものと解される。」として,収益事業収入ではないとしています。
また,駐車場をテナント(区分所有者から賃借を受けた占有者(入居者))が利用して使用料を支払っていても,占有者は区分所有者に準じた立場にあり同視できるから収益事業に当たらないとしています。
収益事業収入に該当するかは,結局のところ,実質判断ということなのでしょう(なお,宗教法人が死亡したペットの飼い主から依頼を受けて葬儀等を行う事業が収益事業に当たると判断した最高裁平成20年9月12日判決も,当該ペット葬祭業は外形的に見ると請負業等の行為の形態を有すると認定した上で,当該事業の内容等から総合的に判断して請負業に当たる,と判示しています)。