弁護士による税務紛争対応(再調査の請求・審査請求・税務訴訟,税務調査)
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本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾
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既に各報道がなされているように、国税庁は、いわゆる信託型ストックオプションについての課税の取扱いを明示しました(「ストックオプションに対する課税(Q&A)」)。
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事実認定ないしは条文の解釈、適用の問題であるので、最終的には裁判所の判断となります。
報道によれば信託型ストックオプションを廃止し、税制適格型に移行した会社もあるとされています。
国税庁の見解を前提にする限り、過去に権利行使した役職員がいる場合には、企業において源泉所得税の納付が必要となります(所得税法183条)。
また、源泉所得税に係る不納付加算税(10%。自主納付の場合には5%。国税通則法67条)の納付も必要となります。
問題は、過去に権利行使した役職員が既に企業を退社している場合ですが、源泉所得税の法律的建て付けからすれば、源泉所得税の納税義務者は企業であり、国が直接役職員に納税を求めることはできません(最高裁昭和45年12月24日判決、最高裁平成4年2月18日判決)。
そうすると、企業としては、国に対して、税務署が直接に退社した役職員に税務調査をして納税するように求める、ということはできず、いったん企業が源泉所得税を納付し、後に(退社した)役職員に請求をすることになります(所得税法222条)。退社した役職員から回収することができないこともあるでしょうが、そのリスクは企業が負うことになってしまいます。
なお、所得税基本通達194~198共-1、2は、扶養控除申告書等に誤りがあって源泉徴収不足額があった場合に、企業に過失がなく、徴収不足額を徴収して納付することができないことについて正当な事由がある場合には強いて追求しないものとするとしています(なお、この通達は源泉徴収制度にそぐわない(扶養控除申告書に誤りがあった場合にはそもそも企業に源泉徴収義務は生じない)と解すべきだと思われますが、その点は置きます)。
信託型ストックオプションでも、巷間、源泉徴収義務はないと言われていたのであり、企業が源泉徴収をしていないことに(少なくとも)大きな過失はないように思いますが、当該通達は扶養控除申告書等に誤りがあった場合を想定したものなので、国税庁としては今回のケースには適用を認めないと思われます。
なかなか悩ましい問題ではありますが、今後の展開が注目されます。