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本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾

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信託フォーラムに寄稿しました(遺言代用信託と異なる承継とした場合)
(r3/4/17更新)

  1.  信託課税関係の原稿を寄稿しました。

    「信託の終了と財産の帰属変更の課税問題について」(信託フォーラム 2021年4月号)

     
  2.  内容としては、いわゆる遺言代用信託において委託者死亡によって信託が終了し、残された帰属権利者同士で信託とは異なる承継とした場合に、贈与税課税が発生しないか?という問題です。

     遺贈の場合には国税庁が遺言と異なる遺産分割の場合に贈与税課税はない、という見解(「遺言書の内容と異なる遺産の分割と贈与税」)を公表していますが、信託の場合は特にありません。
     
  3.  私見は、①遺贈が受遺者の放棄によって効力を失ったときは、受遺者がうけるべきであった目的物は相続財産として相続人に帰属し(民法995条)、遺産分割の対象となることと同じように、②遺言代用信託の場合に、帰属権利者の残余財産給付債権の放棄があったときは、残余財産給付債権は、信託法182条2項によって相続人に相続財産として帰属し、遺産分割の対象となる、と考えます。

     したがって、贈与ではないので贈与税課税はされないという結論です。
     
  4.  以上、少しマニアックですが、課税の場面で問題にはなり得ると思います。

     なお、信託法182条2項の解釈が定まっていないので、最高裁平成23年2月22日判決のような事案が遺言代用信託で生じたならどうなるのか?という疑問も生じます。今後の学説、裁判例の深化を期待したいと思います。

    (参考 最高裁平成23年2月22日判決)

    ・「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合における当該遺言の効力が問題となった事例。

    ・最高裁は、遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはない、とした。