弁護士による税務紛争対応(再調査の請求・審査請求・税務訴訟,税務調査)
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本間合同法律事務所
弁護士・税理士 坂 田 真 吾
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旧民法では、遺留分減殺請求権は、形成権であって、その権利の行使は受贈者又は受遺者に対する意思表示によってなせば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、いったんその意思表示がされた以上、法律上当然に減殺の効果が生じ、目的物上の権利は当然に遺留分権利者に復帰すると解されていました。この考えを、形成権=物権的効果説といいます。
新民法では、遺留分減殺請求権に係る旧民法1031条を削除した上、新民法1046条を新設し、名称を遺留分侵害額請求権とあらため、遺留分権利者が権利行使することにより、受遺者又は受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができることとしています。
このような法的性質の変化に伴い、物権的効果説が放棄され、遺留分権利者の権利行使の効果が物の共有から金銭債権の発生となります。
そして、かかる法的性質の変化は遺留分権行使による課税関係にも影響を与えます。
実務上、遺留分侵害額請求を受けた受遺者又は受贈者が、目的物を売却し、当該売却資金を原資として遺留分権利者が弁償を受ける、ということがあります。この場合のキャピタルゲイン課税の負担者も、今般の改正による影響を受けます。
すなわち、旧法では遺留分減殺請求権の行使によって共有状態となった不動産を売却したことになるので、売却に係る譲渡所得税債務も相続人が共有持分に応じて負担します。
しかるに、新法では、受遺者がすべての持分を取得することになるので、遺留分侵害額請求権の行使の有無にかかわらず、譲渡所得税債務を全て負担するということなってしまいます。
この点についても、実務上、上記のような工夫をして、売却前に、受遺者が遺贈を放棄して、遺留分権利者を含む相続人全員で遺産分割の合意をしたということであれば、共有物を売却したものとして、売却に係る譲渡所得税債務を公平に負担することができるのではないか、と思われます。