国税通則法改正後の審査請求実務について執筆した論文が日税研究賞を受賞しました
(h27/8/31更新)
審判所での実務経験も踏まえて,国税通則法改正後の審判所のあるべき実務について試論を書いた論文が,
第38回日税研究賞
を受賞しました。
ごく簡単に内容を述べれば,現在の審査請求実務においては、原処分庁は,審判所の職権収集(通則法97条)に応じて提出した証拠は,請求人の閲覧対象とならないことから,その手持ち証拠を網羅的に審判所に提出する傾向があると言えると言えます。
(当ホームページの「
審査請求
」ご参照)
しかし,法改正後は,それらの証拠も請求人の閲覧・謄写の対象となり(改正後通則法97条の3第1項),このような取扱を原処分庁が維持することは困難になると考えられます。
そうすると,原処分庁が請求人に有利な証拠を審判所に提出しないといった場合には,今回の法改正は,かえって,請求人の権利救済にとっては消極に働きかねないという問題を内包します。
この問題は,刑事訴訟の分野で長年にわたり議論され,判例や立法により一定の解決がなされてきた,「検察官の手持ち証拠の開示の問題」と同根といえます。
各種文献を読む限り,以上の問題は,法改正を主導した方々にとっても十分に意識されていないのではないかと思われます。
どのように対応するかは難しいのですが,私としては,審判所には,改正後の通則法97条の3第1項から除かれている(請求人の閲覧・謄写権の対象とならない)通則法97条1項1号の質問権,同3号の検査権があるので,これを活用し,原処分庁の手持ち証拠の開示を受け,請求人の防御の利益に配慮しながら事案の調査審理を検討するという役割が期待されるものと考えます(このような運営は,いわば民事訴訟の文書提出命令におけるイン・カメラ手続(裁判所だけが文書を閲読して文書提出命令の除外事由(秘密等)の有無を判断する手続。民事訴訟法223条6項)と同じような効果を,審判所の職権調査によって実現しようとするものとも言えます)。
改正法は平成28年6月までの政令で定める日から適用されることとされています。今後の審査請求実務がどのように変化していくか,注目したいところです。
(なお,当該論文は,日税研究賞「入選論文集」に収録されており,また,要約版が税研186号(2016年3月)に掲載されています。)
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